そらの噛み癖に悩んでいるときに、「クリッカートレーニング」というトレーニングに出会いました。
お手やハイタッチなどの可愛らしい芸から始め、日々のケアが楽にできるようになることを目的としたトレーニングをすることによって、信頼関係を築く、というもの。
この頃私は、恐らくは間違った噛み癖対応のために「そらと、ちゃんと信頼関係が築けてないのではないか?」と思っていたので、この「クリッカートレーニング」というものに挑戦してみることにしたんです。
その結果、噛み癖が治った、というところまではいきませんが、コミュニケーションを通して、少しずつ良い方向へ変化しているのを感じています。
目次
クリッカートレーニングとは?
「クリッカートレーニング」とは、クリッカーという音の出るグッズを使って、してほしい行動をしたときに、音で「正しい」ことを伝え、おやつなどのごほうびを与えて、正しい行動をしてもらうトレーニングです。
猫にとっては、おやつがもらえる楽しい「遊び」、飼い主さんにとっても楽しい「遊び」であると同時に、猫ちゃんとコミュニケーションを取る方法のひとつになります。
猫の行動のキホン
猫ちゃんの行動の基本になっている本質は、単純です。
◆猫が行動して、良いことが起こる>>>その行動を繰り返すようになる
◆猫が行動して、悪いことがなくなる>>>その行動を繰り返すようになる
◆猫が行動して、悪いことが起こる>>>その行動をしなくなる
◆猫が行動して、良いことがなくなる>>>その行動をしなくなる
例えば、
嫌いな抱っこをされて噛んだら放してくれた>>>抱っこしたら噛むようになる
キッチンの上に乗ってコンロが熱かった>>>キッチンに乗らなくなる
という具合に、猫ちゃんにとって良いことが起こるとその行動を繰り返し、悪いことが起こるとしなくなる、というものです。
こういった本質を利用したもののひとつが、クリッカートレーニング。
このトレーニングには、猫ちゃんが大好きなおやつを使用します。飼い主さんの指示通りにしたら、おやつがもらえる。だから、楽しく続けられるんですね。
クリッカートレーニングでできること・目指すこと
トレーニングといえば、犬ですが、なぜ猫ちゃんにトレーニングが必要なんでしょうか?
ワンちゃん同様、猫ちゃんも病院へ行くときなどには大人しくキャリーバッグへ入って欲しいし、日々のケアである爪切りやブラッシングなども必要です。
ですが、猫ちゃんはワンちゃんのように一筋縄にはいきません。
飼い主さんに褒められてなんぼの賢いワンちゃんとは違って、猫ちゃんは、我が道を行く動物( ̄▽ ̄)
飼い主さんが単純に指示したって、言うことなんか聞きゃしません(笑)
そこで、先ほどの行動のキホンを利用し、猫ちゃんが好きなおやつを利用してトレーニングをするんです。
トレーニングで出来るようになることの例を挙げてみると、まずは、可愛らしい芸♪
お手やハイタッチなどの芸が、猫ちゃんでもできるようになります。我が家のそらも、2,3日でマスターしました。超可愛いですよ♪
そして、簡単なトレーニングを応用し、最終的な目的は、健康管理を無理なくできるようになること。
歯磨きや爪切り、ブラッシング、キャリーバッグに入ってもらうといった日々の行動や、目薬や飲み薬を飲んでもらう、ハーネスを装着するなどの有事のときの行動です。
このような、日常のケアをするためのトレーニングを「ハズバンダリートレーニング」といい、猫ちゃんになるべく負担やストレスを与えずにケアできることを目的としています。
しなければならないからといって、嫌がる猫ちゃんに無理やりケアをすることは、飼い主さんも心が痛いし、猫ちゃんにとっても辛い経験ですもんね・・・。
また、クリッカートレーニングは頭と体を使ってするので、猫ちゃんの頭の体操にもなるし、ジャンプをしたりすれば良い運動にもなります。
室内飼いで、毎日たいくつな日々を過ごしている猫ちゃんには、飼い主さんと楽しくトレーニングをすることは、よい刺激にもなります。
クリッカートレーニングのコツと注意点
クリッカートレーニングをするときのコツと注意点です。
コツ
◆静かな、集中できる場所でトレーニングをする
◆トレーニングをしないときには、クリッカーやおやつは見えない場所に片付けておく(特別感を演出?)
◆好きなおやつを選ぶ
◆お腹が空いているときを狙う
◆してほしい行動をした瞬間にクリッカーを鳴らす
◆声をかけて褒めるときは、短く簡単な言葉で統一
◆少しずつ慣れさせていく
可愛い我が子を褒めるときには、ついつい「いやぁ~ん!可愛い~♪すごいね!いい子ね~♡」など、沢山声をかけたくなるもんですが、グッと我慢。
簡単で短い言葉「いい子」=褒め言葉ということを覚えてもらいましょう。
「いい子」を覚えてくれると、トレーニング以外のときに猫ちゃんがふいに良い行動をしたときに「いい子」と声をかけてあげると、猫ちゃんも「褒められた!」と感じて嬉しいかもしれません。
少しずつ慣れさせるというのは、ハーネスをつける練習をするときに、いきなり装着させるのではなく、ハーネスそのももの存在に慣れさせることから始めて、次は頭からかぶってすぐ脱がせる、次に1部固定してすぐに外す、次に胴回り部分も装着してみる、次に全部装着しておもちゃで遊ばせてみる、などです。
焦らず、少しずつ慣れてもらうのがコツです。
注意すること
◆トレーニングのときには必ずおやつをあげる
◆おやつを与えることによって1日の摂取カロリーを超えないよう、普段のごはんの量を減らす
◆猫ちゃんの集中力は短いので、短時間(2,3分)でトレーニングをやめる
集中力ですが、そらの場合、トレーニングをし始めて3分くらいで飽きてきてやる気をなくしますし、周りで音がしたりするとそっちに気を取られて集中力がなくなり、トレーニングそっちのけで単純におやつを食べるのみで終わってしまうこともあります(;^ω^)
トレーニングに必要なもの
クリッカートレーニングに必要なものは、シンプルです。
◆クリッカー
クリッカーという、ボタンを押すと「カチッ」と音の鳴る道具です。私が購入したのはこれ。
指にくぐらせるゴムが付いており手のひらに固定できるので、両手を使いたい場合でも手放しできます。
クリッカーをわざわざ買わなくても、身近にあるものですと、ノック式のボールペンなんかも使えます。
なんせ、何度鳴らしても同じ音量で同じ音が出るものであればいいんです。
舌を「コッ」っと鳴らす方法もあるみたいで、やってみたのですが、やはり毎回同じように鳴らすのは難しくて、結局クリッカーを使っています。
◆おやつ
猫ちゃんが喜ぶおやつを用意します。ドライフードが扱いやすいですが、粒が大きい場合はピルカッターなどで半分とかに分割して使用すると気になるカロリーも抑えられ、その分回数が多くトレーニングできます。
他にも、半生タイプやペースト状のおやつでもOK。ハーネスを装着する場合などには、ペースト状のおやつをペロペロ舐めさせている隙にトレーニングできます。
◆ターゲット棒
「ここだよ」とか、「ここに乗って」とかの指示をするのに、棒を使います。棒だったらなんでもいいです。
私は、使わなくなった猫じゃらしの棒の部分を使っていました。長さは短めの方が使いやすいです。
クリッカーとターゲット棒が一体になったものもあるようです。
クリッカートレーニングのやり方
クリッカートレーニングをする前に、「チャージング」ということをします。
「クリック音=ごほうび」を結びつけるための、簡単なトレーニングです。
クリッカーを「カチッ」と鳴らして、すぐにおやつをあげます。これを何度か繰り返すだけ。
これで、「クリック音」がすると、「ごほうび」がもらえるんだ、ということを猫ちゃんに覚えてもらいます。
そして、ようやくトレーニングに入ります。
モノを差し出されると、思わず嗅いでしまう、という猫の習性を利用したトレーニングです。
1.ターゲット棒を見たら、クリック+おやつ
2.鼻を近づけてきたら、クリック+おやつ
3.鼻をターゲット棒につけたら、クリック+おやつ
4.猫ちゃんから少し離れて、近づいてきて鼻にターゲット棒につけたら、クリック+おやつ
まずは、ターゲット棒にタッチできるようにトレーニング。タッチできるようになったら、ハイタッチのトレーニングしましょう。
慣れてきたら、「ハイタッチ」と声での合図もしてみましょう。
1.ターゲット棒に手でタッチしたら、クリック+おやつ
2.ターゲット棒に手のひらをかざして、棒ごしに手のひらにタッチしたら、クリック+おやつ
3.ターゲット棒にタッチしそうになった瞬間、棒を引いて手のひらにタッチしたら、クリック+おやつ
4.手のひらにタッチしたら、クリック+おやつ
ハイタッチの練習と同じやり方です。まずは棒ごしにタッチ、から始めます。
1.手のひらにターゲット棒を添えて、お手をしやすい位置に差しだし、棒にタッチしたら、クリック+おやつ
2.ターゲット棒にタッチしそうになったら棒を引いて、手のひらにタッチしたら、クリック+おやつ
3.手のひらに前脚を乗せたら、クリック+おやつ
と、クリッカートレーニングの序盤はこんなかんじですが、これをアレンジしたり応用したりすることによって、沢山の遊びやケアの練習ができるようになります。
ハイタッチもお手も、愛猫のムチムチ肉球が手のひらに押し付けられるほど、幸せなことはなく・・・初めてお手をしてくれたときは悶絶しました(*’ω’*)
私がこのクリッカートレーニングについて勉強し、参考にしたのは、『猫との暮らしが変わる遊びのレシピ 』という本です。
キャットインストラクター、動物の行動コンサルタントという肩書のお二方が執筆されたもので、クリッカートレーニングの仕方が写真付きとでとても分かりやすく説明してあり、猫との付き合い方や暮らし方について、とても勉強になる1冊。
また、キャットインストラクターの坂崎さんという方は、「Happy Cat」という教室を主宰されていて、ここでは猫とのコミュニケーションや生活の質の向上、ストレス軽減を目的としたトレーニングなどをされています。
ホームページも、とても勉強になるので一度覗いてみてください。
そらのトレーニングの様子
実は、クリッカートレーニングを知る前の、そらがまだ子猫の頃には、「おすわり」を取得していました。
普段のごはんをあげるときに、ごはんを手に持ったまま、「おすわり」というと、座るようになったんです。
「おすわり」と言ったときに、たまたま座ったら褒められて、ごはんがもらえた、ということを何度か繰り返していくうちに覚えたようで、今でも「おすわり」はしてくれます。
そんなそらがクリッカートレーニングを始めたのは、生後10か月頃でした。
この頃は、軟便対策で療法食のウェットフードを食べていたので、トレーニングには同じメーカーのドライフードを使用。
一粒が結構大きめだったので、ピルカッターで4分の1くらいに割ってあげていました。
トレーニングは、1日1回、時間の余裕のある夜ご飯の前にしていました。
チャージングから始め、ターゲット棒に鼻ツンは1日で取得。
ハイタッチとお手は、それぞれ2,3日かかったかな。
その後、私の足を飛び越える「ジャンプ」まで取得しました。
他には、ターゲット棒で、椅子の上をトントンすると、椅子の上にぴょんと上がってくれます。
そらとこんな風に二人で何か夢中になれることって、おもちゃで遊ぶことくらいしかなかったので、クリッカートレーニングはとても新鮮で、そらもなんだか楽しそうなんですよね。
その後、しばらくトレーニングをしなかった時期が1,2ヵ月ほどあって、最近また再開したのですが、覚えてたんです。お手とハイタッチ。
ジャンプは忘れていましたけど、再練習を始めて2日で思い出したようです。
お手と、ハイタッチの練習の様子☟
ハーネスを装着する練習もしています。
ちなみに先日、私の弟がおやつを持って「お手」と「ハイタッチ」に挑戦してみたら、ちゃんとしてくれました!
トレーニング自体は私としかしたことがなかったのに、他の人でもお手とハイタッチができたことに感動しました。
普段、私以外の人と触れ合うことが少ないので、こうやってスキンシップを取って、少しずつ人慣れさせていきたいものです。
クリッカートレーニングの効果は?
わたしがそらとクリッカートレーニングをしようと思ったきっかけは、「噛み癖」でした。
抱っこをしたら暴れて噛んだりする、ブラッシングをすると噛む、爪切りしようとすると噛む・・・
日々のケアが全然できない。触れ合うことができなかったんです。
ヒザの上で寝ている隙に爪を切ったり、目薬をしたりする日々。
そんな噛み癖がなかなか治らず、信頼関係が築けていないからなのかな・・・と悩んでいたのです。
クリッカートレーニングで噛み癖が治る、ということはどこにも書かれていないけれど、トレーニングで信頼関係を築くことは、そういった行動の改善にもつながるのではないかと思いました。
クリッカートレーニングを始めてすぐに感じたことは、アイコンタクトが増えたこと。
そらはしてくれていたのに、わたしが今まで気が付かなかっただけなんでしょうか?
それとも、お互いがアイコンタクトをするようになったのでしょうか?
アイコンタクト。たったそれだけのことが、とても嬉しかったのを覚えています。
そして、ろくに抱っこをさせてくれなかったそらが、長時間は無理ですが、ちょっとした移動くらいなら大人しく抱っこさせてくれるようになったんです。
降りたくなったら、ぐぐぐ~っと少し暴れますが、子猫のときのように噛んできたりはしなくなりました。
寝ているスキにしかできなかった爪切りは、うとうとしていたり、寝起きなどの気分がまどろんでいるときに爪切りができるようになりました。
しつこく切ろうとすると噛もうとしてくるので、1回に1,2本しか切れませんが、以前は寝てるときにしか無理だったので、これも大きな一歩です。
それと、猫ちゃんの可愛い仕草である「ゴロンしてお腹を見せる」行動を、今までそらはしてくれなかったのですが、最近ではゴロンと床で転がって「こっち見て」とこちらをジッと見つめてきます。
ご機嫌で寝ているときには、ググーっと伸びをしてお腹を見せてくるので、そっと撫でてあげても、大人しくされるがままになっています。
ふわふわの柔らかいお腹の毛を撫でることができて、わたしは超幸せです♪
トレーニングを始めて約半年ですが、噛み癖に関しては、以前よりはマシになったような気がしますが、全くなくなったわけではありません。
今でも、わたしが夜に寝ようとすると「まだ遊ぶ!おいてかないで!」といったかんじで飛びかかって噛んでくるし、ブラッシングしようとしても、機嫌が悪いとすぐに噛んできます。
でも、以前よりは意思の疎通ができるようになったような気がします。
トレーニングをするときには、猫ちゃんの様子や動きをよく観察する必要があるので、その観察力が養われたためかもしれません。
クリッカートレーニングをすることで、間違いなくお互いの距離が縮まったと感じています。
先に紹介した、『猫との暮らしが変わる遊びのレシピ』に、「信頼関係があるからトレーニングができるのではなく、信頼関係を築くためにトレーニングをする」というコメントがありました。まさにその通りだと思います。
難しいレベルのトレーニングまでいかなくても、お手やハイタッチなどの可愛い仕草はすぐに覚えてくれると思うので、クリッカートレーニングをすることは決して損にはなりません。
楽しくコミュニケーションをとって、信頼関係を築けるクリッカートレーニング。猫飼いさんに是非試してもらいたいです(^-^)